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アンティーク懐中時計修理 巻止め編

2017/03/24

WBCが終わった。

 

アメリカ本土に乗り込んだ侍ジャパンがやってくれると期待していたのだが、、。

 

「WBC効果」 の投稿でお話しした通り、このところはずっと飲みに行かずに済んでいたのに、、、一昨日の晩はあまりの悔しさに、国立で朝まで飲んでしまった。。

 

さながら 「逆WBC効果」 か?

 

 

さてさて、今日は、先日の時計の続きで、 「巻止め」 の製作。

 

巻止めとは、一部の懐中時計、主にイギリス、スイス、フランス、ドイツあたりの時計に搭載されている機能で、ゼンマイの巻き上げを規制するためのもの。

 

一般的な手巻きの時計のゼンマイを巻いたことのある人は解ると思うが、ジコジコとゼンマイを巻き上げると、最後にはうにゅーっという感じで、それ以上巻けなくなる。

 

つまり、それがゼンマイの 「巻き終わり」 ということ。

 

この時、香箱の中で、ゼンマイは本当に目一杯巻かれた状態になっているから、ゼンマイの力は極端に強くなっていて、時計の部品にとっては、かなり辛い。

 

時計屋さんから 「あんまり巻き過ぎると、ゼンマイが切れちゃうよ」 と言われた方もいらっしゃるのではないだろうか?

 

 

これは部品にとって辛いだけでなくて、時計の精度にも悪影響を及ぼす。

 

簡単に言うと、、、一杯一杯まで巻き上げた直後の時の動力のトルクと、しばらくしてゼンマイが少し解けてきた時のトルクにかなりの差があるから、それぞれの状態における時計の精度に差が生じ易いのだ。

 

これを減じるために、時計史上においては数々の工夫がなされてきたのだが、その中の一つが、この 「巻止め」。

 

これは、香箱の中でゼンマイがギューギューに巻き絞られる前の段階で、巻き上げがロックされるよう制御するのが狙い。

 

同時に、巻き絞られた際の強すぎるトルクの緩和だけではなく、解ける寸前のトルクの弱すぎる状態も除外しているのだ。

 

 

まあ、巻止めの構造その他に関しては、パスタイムのホームページの方をご参考頂くとして、この 「巻止め」、 通常は特殊な形状をした歯車(マルテスクロス)と、カブトムシの頭のような形状の部品(フィンガーピース)の二つによって構成されているのだが、、、困ったことに、これらが無くなってしまっている個体が非常に多い。

 

パスタイムでお預かりするアンティーク時計で言うと、、、ざっと7割はあるだろうか。

 

つまり、元々巻止めのついている仕様の時計の7割程度はどちらか一方の部品、若しくは両方とも無くなっているということになる。

 

勿論、普通に使っていて部品が無くなることはない訳だから、、、これは時計屋の仕業ということになるが、、。

 

 

ちなみに、巻止めの搭載されている時計は全体から見るとごく一部、それもある程度高級な時計に限られているので、、これに馴れている時計屋は非常に少ないのが現状。

 

それに、基本的に無くなっても時計はとりあえず動く部品だけに、無くなってしまったのは持ち主に分からず、始末に悪い(?)。

 

分解作業中に ガシャ、 「アチャー!」 と壊してしまったり、 「何だか見慣れないものがついてんなー。 訳わかんないから外しとくかー」 みたいな風景が想像されるのだが、、。

 

 

幸い、今回の時計の場合は、歯車は無事で、フィンガーピースのみの欠損。

 

ある程度元になるブランクもパスタイムの在庫にあったから、完全な板材からの削り出しではなく、、、オーナーにとっても私にとっても、最悪な事態(?)は逃れたと言える。

 

作業工程は以下の通り。

元になるブランクを、横に置いたところ。 こいつの寸法、形状を加工し、仕上げる

クサビの通過する切れ込みの加工開始

切れ込みの加工、先端の長さ、形状の加工調整、完了

上面の鏡面仕上げ 段階1

鏡面仕上げ 段階2 研磨剤の番手を更に上げる

上面の鏡面仕上げ、及び外周部分の面取り仕上げ完了

香箱に取り付けた状態 オリジナルの歯車と同仕様の仕上がりになっているのがお判りいただけるでしょうか?