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懐中時計講座・第3回 HAMILTON WATCH CO.

2009/11/27

 
吉祥寺のアンティーク懐中時計の修理とエングレービング ハミルトン

HAMILTON990

第3回 HAMILTON WATCH CO. ハミルトン

今世紀前半のハミルトンのNo.992に代表される鉄道時計は精度と耐久性に必要なあらゆるシステムを投入された逸品揃いである。

いかにハミルトンの時計が正確で信用に値する品質を持った時計か、そういったことの根拠として自社の鉄道時計をあげるのがハミルトンの広告の常套句であり、そしてそれは事実とたがわぬ広告だった。

そうしたハイクオリティーを誇ったハミルトンのル−ツは1876年9月に設立されたアダムス&ペリ−ウオッチCo.にまでさかのぼることができる。

20サイズで20石、18サイズで20石と17石などを作っているがいずれも稀少である。というのも3年後の1877年に早くもランカスタ−ウオッチCo.(LANCASTER WATCH Co.)に売却されているためである。

ム−ヴメントの特徴としては3/4プレ−トのギルトム−ヴメント、竜頭巻き(鍵巻きもある)石はネジ留めされておりペンダントセットである。

当時にしてみると最新式のシステムを導入したつくりであることが窺われる。

1870年代を代表するポケットウオッチといっても過言ではないものだが、経営的には成功しなかった。

ランカスタ−ウオッチCo.は

1877年 8月〜1877年10月 LANCASTER,PA.WATCH Co.

1877年11月〜1879年 5月 LANCASTER,PA.WATCH Co.LTD

1883年 5月〜1886年 LANCASTER WATCH Co

となり、20.000個のム−ヴメントを生産した。

ランカスタ−ウオッチはすべて3/4プレ−トの古いアメリカのポケットウオッチのスタイル(ウォルサムの初期やオ−ルドハワ−ドなどは3/4プレ−トである)のム−ヴメントを採用しており、オリジナルでコンディションの良いものは稀少である。

この後同社はABRAM BITNERによって買収され1886年に社名をKEYSTONE STANDARD WATCH Co.と変更するが、ム−ヴメントはランカスタ−ウオッチCo.のものと同様である。

ム−ヴメントの総生産は48.000個だった。

そして1891年ハミルトンウオッチCo.(HAMILTON WATCH Co.)に買収される。

ハミルトンはこの他、AURORA WATCH Co.を買収し1892年12月14日、HAMILTON WATCH Co.としてスタ−トした。

ハミルトンの名で最初に出された時計はNo.940である。

この時計は1910年に生産を終えるが、長く鉄道員の間で名の通った鉄道時計だった。

1923年までにハミルトンの製作した鉄道時計の約53パ−セントをこの時計が占めた。

No.940は21石ニッケルム−ヴメント、ダブルロ−ラ−、5姿勢調整、金枠ネジ留めのム−ヴメントである。

この機種のハイグレ−ド版に No.946,947がある。

No.947は稀少でなかなか目に触れることはない。

No.946はフルプレートのム−ヴメントの香箱上に石が入る。

これによってだいぶ外観のイメ−ジが変わるので、当時の最高機種(23石)と言うだけでなくそうしたム−ヴメントの眺望を考えても魅力ある機種といえる。

18サイズから16サイズにポケットウオッチの主流がうつると、ハミルトンはその技術力を駆使し、鉄道時計のシェアを広げていった。

その代表的な機種をあげてみると、19石ではNo.996,952,21石ではNo.992,990,23石では950が鉄道管理局から公認を受けている。

このレイルロ−ドアプル−ブ(公認鉄道時計)でもっともポピュラ−で定評のあるのはNo.992である。

この機種には 992Bというものもあり、ム−ヴメントの設計も992とは異なっているが、もっとも大きな違いは髭ゼンマイに合金(エリンバ−)を用いて耐磁性を持たせたことである。

いずれも石数は21石、5ポイントアジャストである。

No.950はハミルトンの16サイズでは最高の23石を配したモデルであり、ウォルサムのリバ−サイドマキシマに匹敵するアメリカンポケットウオッチの名作と言っても過言ではない。

歯車には金を使用(ゴ−ルドトレイン)、モ−タ−バレルでかつ香箱芯に石を施し、よりスム−ズにゼンマイを巻き上げられるシステムが採用されている(ジュエルドモ−タ−バレル)。

950には950Bがあり、髭ゼンマイにエリンバ−を用い、そのうえテンプに合金(ベリリウムを含有するもの)を使い温度によるテンプの変化を最小限に抑える機能を採用した。このため950Bのテンプは従来の割りテンプではなく一体式になっている。

この他、BALL WATCH Co.に供給されたモデルがある。

18サイズの21石モデル(オフィシャルレイルロ−ドスタンダ−ド)には放射状に波模様が描かれており、その外観は一見に値する。

ハミルトンのポケットウオッチのいま一つの特徴は、鉄道時計以外のモデルにも優れたものが少なくないということである。

例えば12サイズのNo.900などは19石だが、5ポイントアジャスト、ゴ−ルドトレインでかつ香箱芯に石をいれたモデルであり、大きさが小さいことと、針合わせのシステムがレバ−セットではなくペンダントセット(竜頭を引いて回して合わせる通常のセット)であること以外は、鉄道時計と何ら変わらない仕様になっている。

これ以外にも17石のム−ヴメントなどの仕上げも今世紀初めのものの仕上げはハイグレ−ド品と紛うようなものがほとんどである。

No.972を見ると、金枠ネジ留めはもちろんダブルロ−ラ−、微調整装置が採用されており、アジャストも5ポイントである。

また鉄道時計と同様にム−ヴメント上に華やかな模様(Damasskeened)が施されている。

変わったモデルとしては、12サイズに17石デジタルセコンドのNo.912がある。

ほか、セコンドセッティングナビゲ−タ−マスタ−は中三針の22石の 992Bがある。

このム−ヴメントはベリリウム合金の一体式テンプでエリンバ−の髭ゼンマイを使用し、ポジションアジャストしたハイグレ−ド品である。

しかし、このようにアメリカのウオッチメ−カ−として優れた足跡をのこしたハミルトンも1969年にスイスに移転し、事実上その歴史に幕を閉じる。今でもハミルトンの時計を愛するファンの多くは、アメリカ製のハミルトンにこだわる。

それは、アメリカ製のハミルトンの質の高さを嫌というほど見せつけられているからである。

とくにポケットウオッチの世界で、前世紀の終わりから1930年頃までにハミルトンの製作した時計には、いまだにポケットウオッチのファンの心をとらえて放さない魅力がある。