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資料

HAMILTON 950 懐中時計

2010/08/20

吉祥寺のアンティーク懐中時計の修理とエングレービング ハミルトン

HAMILTON 950

 言わずと知れたハミルトンの名機 モデル「950」です。

吉祥寺のアンティーク懐中時計の修理とエングレービング ハミルトン

アンクル

 

アンクルのツメ石がサファイアなのがお分かりでしょうか?

他メーカーでもたまに見かけますが、特にハミルトンの場合、高級グレードのアンクルに、いわゆる「サファイアパレット」を採用したものが多く見られます。

ご存知の通りサファイアとルビーは同じ「コランダム」の石で、鳩の血の色に近い物を「ルビー」、それ以外の色の物をサファイアと呼んでいます。

一説によると、ブルーサファイアの表面硬度はその他のコランダムより若干硬いため、絶えずガンギ車の歯先と接触を繰り返すアンクルのツメ石に使用するメリットがある、とのことですが、正直その点に関しては確認していません。

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ガンギ車

 

ガンギ車(エスケイプホイール)です。

この950のガンギ歯は、スイスの高級機種の多くのように歯先の作動面を残してリムやスポークの肉厚を落とした特別仕様になっていることが見て取れます。

(より後年の950のガンギ車は、先端から中心まで面の揃った仕様になります。)

吉祥寺のアンティーク懐中時計の修理とエングレービング ハミルトン

受け板裏側

 

2・3番車のブリッジ裏側です。

多くの高級時計同様、オーナーの目の届かない裏側まで研磨仕上げされていますね。

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ゴールドトレイン

 

2・3・4番車です。

アメリカ時計の高級機種の典型である、いわゆる「ゴールドトレイン」です。

ローカラットとは言え、絶えず力の掛かる歯車に金を使用する事に対してよく疑問の声を聞きますが、ローカラットの金や銅のような「粘り」のある金属は、「擦れ」に対してかなり耐久性があります。

また、その「見た目の美しさ」以外にも、真鍮の歯車と比較して「遥かに酸化しずらい」というメリットがあります。

実際のところ、この歯車を見て100年以上が経過した物に見えますでしょうか?

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モーターバレル・角穴車

 

角穴車の裏側と中心のパイプが見えています。

この時計は「ジュエルドモーターバレル」を採用しているため角穴車に直径の太いパイプがネジ止めされ、これに「ツメ」があってゼンマイが巻きつく仕様になっています

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モーターバレル 香箱

 

モーターバレルの歯・箱・軸です。

通常の香箱(モーターバレルでない)では、かなり太い香箱芯を中心にして香箱が回転しますが、この時計の場合、香箱が普通の歯車のように細い芯とかしめ付けられていて芯ごと回る設計です。

これら「モーターバレル」はハミルトン以外のアメリカ時計にも見られますが、「少数のアメリカ向けスイス時計」、もしくはアルバート・ポッターの時計のように「アメリカ人によってスイスで製造された時計」を除くと、ほぼアメリカ時計の専売特許と言っていいでしょう。

もっとも、モーターバレルにはモーターバレルの構造的な弱点もありますので全てが勝っているとは言えませんが、通常の香箱と比較してそれぞれが完全な状態だった場合、どちらがスムーズに回転するかは明白ですね。

 

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ローラーテーブル  

 

典型的な鏡面仕上げのダブルローラーですが、ウォルサムやエルジンの多くと異なり、振り石の付いている「振り座」は正円ではなく二面が大きく取り除かれた形状のものです。

このタイプはやはりスイスやイギリスの高級機種に多く見られるものですが、テンプの中心の重量をより軽くする→より外側に重心が寄ることによってテンプの慣性が強くなる→精度が向上する、といった精度的なメリットはさほど大きくないにしろ、調整のために取り付け後の振り座を微妙に回さなければならない際などには、正円のものよりグリップがきいて容易であることは確かです。

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地板  

 

地板です。

香箱の下ホゾ部分に穴石(色の薄いサファイア)が入っているのが見えますね。

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輪列

 

地板に香箱→5番歯車をセットしたところです。

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文字板下

 

地板(文字板下)です。

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文字板裏

 

ダブルサンクのダイアル(文字盤)裏です。

一般のオーナーはあまり見ることのない部分かもしれません。

外周部分・中央部分・スモールセコンドディスクと3枚別々に焼かれ、低温のハンダで一体化されます。

この950のダイアルには4本の足が付いていますが、より後年のモデルになると3本に変更されます。

吉祥寺のアンティーク懐中時計の修理とエングレービング ハミルトン

完成後のムーブメント

 

完成後のムーブメントです。

見た目の綺麗さだけに驚くなかれ、100年以上経った今も日差数秒以内で動いています。

「往年の名機」ではなく、まさに「現役」バリバリですね。