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天芯(天真)製作2

時計部品製作

NOTICE:This article written in Japanese.

(公開日: 2010/04/08)

今回天芯を製作・交換するのは、1887年製のパテック フィリップのスプリットセコンドクロノグラフ付き懐中時計です。

年式を考えると製造当時から何度かは天芯が交換されているはずですが、今付いている天芯は、中心の精度・研磨の具合ともにとてもレベルの低いものです。

ホゾ(軸の先端)部分の寸法も穴石に対し細くてガタがありますし、本来のこの時計のグレードとはかけ離れたものですから、オリジナルの仕様に沿って製作・交換します。


天芯のカシメ部分

既存の天芯を天輪から外すにあたり、天輪の腕にカシメられた部分を削り取ります。

間違っても天輪の腕を削らないように、慎重にカシメを取り除きます。


天芯のカシメ部分の切徐
天輪を外す

カシメを切り取る事で、安全かつ容易に天輪が外せます。

こうすることにより、天輪の穴を広げたり変形させてしまったりすることが防げます。


旋盤に鋼材を掴む
天輪
ヒゲゼンマイ

旋盤に熱処理された鋼材を掴み、天輪、ヒゲゼンマイを取り付ける太さに削って行きます。


上ホゾの切削

ホゾの太さも、厳密に穴石に合わせて適切な寸法に仕上げます。


天芯の上半身完成

天芯の上半身が完成し、下半身をある程度削り出した所で切り離します。


大ツバ
小ツバ

下半身の切削に関しては、完全な中心を得ることのできるワックスチャックを使用し、ローラーテーブル(大ツバ)、セーフティーローラー(小ツバ)が圧入で取り付け出来る寸法に切削・仕上げします。


天芯下ホゾ
右が新規製作された天芯

下ホゾも上ホゾ同様、下の穴石に合わせて厳密に仕上げます。

これで天芯は完成です。

元の天芯が磨きっぱなしで白く見えるのに対して、新たに製作した天芯のホゾ黒っぽく光っているのがお分かりでしょうか?

これは、切削・研磨された後にバニッシャー(マチやすり)と呼ばれる特殊な工具で表面硬化されているためです。

こうすることによって、ホゾの表面はただ研磨されただけの状態と比較して遥かに硬くなり、摩擦の抵抗が小さくなるばかりでなく長年の使用に耐えるものとなります。


天芯のカシメ前

次に天輪に天芯をカシメていきます。


カシメの拡げ
拡げた様子

天輪の腕からわずかに出ているカシメ部分をまずタガネで拡げます。


カシメ
カシメ完成

次に、平タガネで拡げた部分を潰し、カシメは完成です。


ローラーテーブル
セーフティーローラー

天芯にローラーテーブル、セーフティーローラーを圧入します。


天芯にテンワ、ローラーテーブル、セーフティーローラーの取り付いた様子

これで天芯にテン輪、ローラーテーブル、セーフティーローラーが取り付きました。


振れ見

次に振れ見に取り付け、天輪の振れ(歪み)を慎重に修正していきます。


片重り見器

天輪の歪み、振れが完全に修正出来たら、今度は片重りを無くしていきます。


ヒゲゼンマイの取り付け
時計に組み込んだ様子

天輪の振れや片重りが完全に無い状態になったら、最後にヒゲゼンマイを取り付けます。

これで初めて天芯交換の完成となります。



Tags
 修理・レストア

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