時計部品製作
NOTICE:This article written in Japanese.
これは19世紀半ば頃のイギリス時計のアワーホイールです。
時針が取り付けられ、12時間で一周する歯車ですね。
一枚の歯が削り取られ、その両脇の歯も先端が潰れてしまっていますから、全く使い物になりません。
見当違いなところにヤスリが掛けてあったり、、「入れ歯」をしようとして隣の歯車まで潰してしまったり、、、、150年余りの間にはいろいろあったのでしょう。
他の歯が健全な状態であれば無くなった歯だけ「入れ歯」する方法もありますが、このように全体に傷んでいるものの場合は新規に製作するべきでしょう。
まず、真鍮の棒を旋盤で切削し、歯車の外径と同じ寸法に加工した後「歯切り旋盤」にセットします。
次に、歯間のプロファイルに合ったカッターをセットし、該当する歯数分の歯を切ってゆきます。
歯切りが完了しました。
通常の輪列の歯車と違い、アワーホイールの場合は全体の背丈が高くなりますから、切り出す歯車も厚みのあるものになります。
時針を取り付けるパイプ部分を切削する前の段階です。
切削後は元の歯車と同じ物になります。
アワーホイールの中心には、分針の取り付けられる「ツツカナ」をやり過ごす為の穴が必要です。
パイプ部分を切削する前にツツカナをアワーホイールの穴に通して、隣り合った歯車との噛み合い・作動具合をチェックしてみます。
この時計の場合は、この頃のイギリスの時計としては大変珍しい「カレンダー付き」のものであるため、通常アワーホイールと噛み合う「日の裏車」以外にカレンダー送りの歯車とも噛み合う仕様です。
良好な歯車の噛み合い具合が確認できたら、次にパイプ部分を切削・加工します。
当然のことながら、パイプは歯車の中心になければなりません。
パイプの根元には小さな段差がありますが、これは時針を取り付けた時に「時針のパイプがはまり込む深さ」を決定するためのものです。
アワーホイールが完成しました。
オリジナルと同じ材料で同じ形状・寸法ですから、これでやっと「新品当時の姿」に戻った事になりますね。