懐中時計講座
NOTICE:This article written in Japanese.
第9回 THE OTHER WATCH MAKERS 1その他のメーカー1
1850−1930年の間、アメリカでは数多くのウォッチメーカーが現れては消えていった。
あるメーカーは大手に吸収され、あるメーカーは経営難から手放し、別のメーカーに買い取られ、逆に大手から独立して設立したメーカーもいる。
また優れた技術者は次々と新たに生まれようとするメーカーの設立に参画した。
しかし1920-30年代のポケットウォッチからリストウォッチへの過渡期にアメリカのウォッチメーカーの殆どは姿を消していった。
イリノイ、ハンプデンといった大手のメーカーもその終焉をこの時期に迎えている。
1930年の公認鉄道時計のムーヴメントリストに名を連ねているメーカーはウォルサム、エルジン、ハミルトン、ハンプデン、ハワード、イリノイ、サウスベンドと自社のムーヴメントを持たないボールを含めても8社に過ぎない。
しかしこのことはアメリカのウォッチメーカーの質を疑うことにはならない。
逆に、コストと経営のバランスが悪く、資本の基盤が弱く、優れたムーヴメントを作りながら続けることが出来なかったのである。
それゆえ、多くの中小のメーカーは買収された後、その技術力と製作したムーヴメントを他のメーカーの手に委ねている。
アメリカの中小のメーカーは一般の人々には忘れ去られたメーカーがほとんどだがポケットウォッチファンやコレクターには著名なメーカーは少なくない。それらのメーカーについて今回は紹介してゆきたい。
1915年にその歴史を終えたロックフォードはイリノイ州ロックフォードに1873年に設立されたメーカーである。
設立に関係したメーカーはコーネルW.Co.。
このメーカーの経営の危機のおり、設備と人材(C.W PARKER、P.H.)を得て誕生した。
工場が完成した1876年から生産を始め、総生産台数は約1.000.000台である。
ロックフォードの時計で特筆すべき機種は数多くあるが、代表的なモデルに「ワインバーゴ」がある。
18サイズは17石レバーセット、5姿勢調整、金枠ネジ止め、ダブルローラー、ニッケルのムーヴメントには綾織り模様の施されたものである。
16サイズでは17,21石があり、5姿勢調整、金枠ネジ止め、ブリッジムーヴメントとなっている。
またこのモデルの16サイズはレイルロードグレイドである。
他、18サイズ、16サイズでインジケーターモデルを製作している。
ポケットウオッチでインジケーターを製作しているメーカーはエルジン、ウォルサムの他ではロックフォードだけである。
1899年のカナディアンパシフィックサービスの公認鉄道時計の規格ではロックフォードは次の機種で認定を受けている。
【18サイズ】
●908,918 21石
●ワインバーゴ 17石
●グレード900 24石
【16サイズ】
●グレード545、525、515、505 21石
●655ワインディングインジケーター 21石
●グレード405 17石
ロックフォードと同時代に誕生したメーカーに「コロンバスW.Co.」がある。コロンバス1876年にD.GRUENとW.J SAVAGEによってつくられたメーカーである。
1882年にオハイオのコロンバスに工場を建て自社製のムーヴメントの製作を始めた。
もともとはスイスのムーヴメントを仕上げて使用しており、これ以降も部品の一部は輸入品を使用していた。
コロンバスで有名な機種は「コロンバスキング」である。
17-25石というハイグレードウォッチの代表である。
ただコロンバスでのみではなく、アメリカンポケットウォッチのコレクターやファンにはよく知られた機種である。
他、レイルウェイキング16-23石がある。
しかしコロンバスは1902年兄弟に買収され「サウスベンドW.Co.」となる。
彼らは工場をインディアナのサウスベンドに移し、1903年から生産を始めた。
年間平均約35.000個のムーヴメントを生産している。
著名な機種は「スチュードベイカー」だが、16サイズ17石のレイルロードグレイドにも素晴らしい仕上げのものがあり、ネームバリューは他社に譲るとしても質の高さには定評がある。
公認鉄道時計は16サイズで19石のNo.293、21石の No.295、No.229、No.227が認定を受けている。
このサウスベンドも1929年に工場は閉鎖されることになり、コロンバスから続いたメーカーの歴史を終える。
総生産量はコロンバス−サウスベンドで約 1.200.000個である。
クロックのメーカーからポケットウォッチの市場に参入したメーカーに「セストーマスW.Co.」がある。
セストーマスはクロックのメーカーとして有名であったが1883年にウォッチの製作を計画、1885年に初めて市場に登場した。
この時の時計は 18サイズで3/4プレート、竜頭巻き、オープンフェイスでロービート(1分間に16.000ビート)だったが、まもなくクイックビート(1分間に18.000ビート)に変更された。
1886年にハイグレードモデルの製作に着手し、7-17石の4つのグレイドのモデルを生産した。後年「メイデンレイン」を送りだすが(18サイズ、デテンプ)これには25、28石がある。
この機種は17石からあるがいずれも非常に希少である。ほか「ヘンリーモリノー」17,20,21石があるがこれも希少モデルである。
セストーマスのムーヴメントデザインは独特であり、3/4プレートで受け側は一枚のプレートですべての歯車を止めている。
外からは脱進機構が見えるだけである。18サイズ、16サイズともに大半がこのデザインのムーヴメントである。
カナディアンパシフィックサーヴィスの公認鉄道時計では18サイズ「メイデンレイン」25石、 No.260、21石、No.382、17石が認定を受けている。
今世紀に入って急成長を遂げたメーカーで代表的なのはハミルトンだが、このハミルトンができるにあたって2つのメーカーが買収された。「キーストンW.Co.」と「オーロラW.Co.」である。
キーストンW.Coは、ランカスターW.Coのムーヴメントとダイヤルを買収し、生産していたのでオリジナルのムーヴメントはない(ダイヤルはある)。
ランカスターW.Coは1877年に「アダムスアンドペリーW.Co.」を買収してできたメーカーである。
ムーヴメントの特徴はすべて 3/4プレートだったことだろう。
また、同社はダストプルーフムーヴメントを開発している。
ムーヴメントの総生産量はおよそ150.000台である。ほとんどが7石−15石だが、“Lancaster,Pa 20石”という希少モデルもある。