時計の話
NOTICE:This article written in Japanese.
8月にご注文頂いた 「透かし彫りムーブメント」 の懐中時計製作プロジェクト。
その途中経過は10月にもご紹介したが(「透かし彫りムーブメントの懐中時計・経過報告」2012年10月03日 )、、、
本日、ようやっとその 「透かし彫り」 の部分が完成した。
確かエングレイバーの辻本が手を付け始めたのは9月くらいだったから、、、かれこれ 「丸3ヶ月」 後の完成、ということになる。
もっとも辻本はその他にも同時進行のプロジェクトをいくつも抱えていたから、これだけに3ヶ月掛かったという訳ではないが、、、いずれにしても、今までいただいたご注文の中で最も長い時間を要した仕事であることは間違いない。
「デッサン」 から 「モチーフの輪郭の彫り」 までは比較的スムーズに運ぶ。
最も長い時間を要するのは 「穴抜き」 と 「穴の整形」 だ。
以前にも書いたが、穴の多くは市販のドリルの使えない寸法になるため、穴抜きに際しては 「ドリルの製作」 が必要になる。
また開けた穴をモチーフに沿って整形していく作業に関しても、、、市販のヤスリは使えない。
したがって、極細の 「糸鋸」 を加工して特殊なヤスリを作る必要もあるのだ。
「コリコリ」 「キコキコ」
実際にはそんな音が聞こえるほど大きな力は掛けられないが、、、イメージとしてはそんな感じ。
傍から見ていると、辻本は顕微鏡を覗き込んだまま眠っているようだが、、、、よく見れば、手先だけが微かに動いている。
「もう少し早く!」 と言いたくなるようなスローな作業。
しかし、少しでも無理な力を掛けて 「髪の毛」 程度にしか繋がっていない部分が切れてしまえば、、、、最後の最後で 「全てがおしまい」
テクニックが必要なのは言うまでもないが、、、ある意味 「究極の根気仕事」 とも言えるだろう。
さてさて。
透かし彫りの完成したムーブメントは、あくまでも 「受け板の細工」 が終わったというだけで、今後 「機械的なレストア仕上げ」 が必要。
しかし仕事の段取りとしては、その前に 「ケース製作」 が来る。
何故なら、ムーブメントにピッタリのケースを製作するためにはムーブメント各部の寸法を細かくとったり、完成前のケースにムーブメントを入れたり出したり、といった作業が必要だが、、、これを 「レストア・調整済みのムーブメント」 でやるとなると、折角ピカピカに仕上げたムーブメントに細かい切り粉や埃が入ったりする可能性があるからだ。
ということで、ムーブメントは辻本から岩田の手に渡され、現在 「採寸・ケースの設計」 の段階に入っている。
予定の納期は少々越えるが(注文主のNさん済みません!)、、、全てが完成したら、改めてこの場でご紹介致します。
ではでは、どうぞお楽しみに!