時計部品製作
18世紀のバージウォッチによく見られる「ダイアルフット(文字盤の足)」の先端の破損です。
ダイアルの足をクサビで横から止める方式なため、長年の間抜き差しを繰り返しているうちに穴から上がちぎれてしまうパターンですね。
殆どの場合そのままにされていることの多い故障ですが、1本がこうなると他の2本に負担が掛かり、当然のことながら他の足も折れやすくなります。
ダイアルを外して見たところです。
この手の時計の場合、ダイアルの構造は「2重構造」です。
まず、ポーセリンのダイアルが真鍮製の枠にクサビ止めされ、その枠から突き出た足がムーブメントの穴に入ったあと更にクサビ止めされる作りになっていることがわかります。
写真で見ると、まさに文字盤の枠の足がクサビの穴の上から無くなってしまっていますね。
仕方が無いので、新規製作することにします。
まず、真鍮棒を旋盤で切削し、オリジナルと同様の形状・仕様に仕上げます。
折れた足をダイアルの枠から削り取り、製作した足を元と同じようにカシメ付けます。
次に、クサビ止めするための横穴を開けます。
ムーブメントに入れてクサビ止めした時にちょうど良い締め付け具合になるよう、「穴の高さ」には充分注意が必要です。
ムーブメントにクサビ止めされた様子です。
この時計が250年前に製造されたと同じ状態に戻った訳ですね。
今後、よほど乱暴な時計屋さんがいじらない限り、「次の交換」は100年以上後のことになるでしょう。