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懐中時計講座・第2回 ハイグレードウォッチ

懐中時計講座

(公開日: 2009/11/27)

第2回 ハイグレードウォッチ

1850年代に始まったアメリカの時計産業は1870年頃になると国内で精密な質の高い部品を生産できる技術力を持ち自給が可能になり、各社がハイグレ−ド品の制作を始めた。

アメリカのウオッチメ−カ−はその優れた技術を表すためにいくつかのポイントに重点を置いていた。

そのポイントは次のようなものである。

高品質なテンプとひげゼンマイ。

精密な歯車とカナ。

ニッケルの織り模様仕上げ。

確実に作動する竜頭巻きのメカニズム。

こうしたム−ヴメントに対する研究開発によってウォルサム(WALTHAM)、ハワード(E.HOWARD)が1860年初頭にハイグレ−ドモデルを制作する。

ハワード(E.HOWARD)は早くから高品質な時計を目指していた。彼は機械製造による精密な部品で時計を作ることを可能にした。

そしてそれらを最後の段階で丁寧な手作業によって完璧に仕上げたものを1860年の初頭に制作していた。

また、ウォルサムに買収されたナシュア(Nashua Watch Co.)も機械による部品製造で時計の生産に成功していた。

ナシュアはウォルサム傘下で一つの部門として Appleton Tracy&Co.、American Watch Co.という高品質の時計を製作した。

このE.ハワードとウォルサムの激しい競争の中で後に続いたのがエルジン(ELGIN)である。

1867年エルジンはBWレイモンドを世に送りだした。

このモデルは高品質にもかかわらず先の二社の価格より非常に廉価に売り出された。

これによってエルジンは鉄道時計の市場に確固とした販売基盤を得ることになった。

ほかUnited States Watch Co.of Marion 15石, New York Watch Co.15-19石、Adams & Perry 21石、Illinois Watch Co.Bunn 15石など、1870年代はアメリカンポケットウォッチの基礎となるシステムを持ったPRECISION WATCHが次々と生み出された。

1880年代からム−ヴメントのプレ−トの材質は真鍮からニッケルにかわり始め、またプレ−トの上には文字以外に綾織り模様が施されるようになった。

石数は17石からそれ以上のものも現れるようになった。

1890年から今世紀に入るころにはスプリットプレ−トのム−ヴメントが現われ、ム−ヴメントの外観も大きく変化する。

1893年に鉄道時計の規格が出来たことから、グレ−ドの高いものはレイルロ−ドグレ−ドと呼ばれるようになった。

これらの中には製作数が少ない為、ほとんど市場に出回ることはないだろうというものもある。

確認されている個数が百個に満たないモデルもある。

それほどではなくともこれまで日本では中々眼に触れることのなかったモデルはいくつもある。

時計好きの人ならば、ウォルサム、ハワ−ド、エルジン、ハミルトン(HAMILTON)、イリノイ(ILLINOIS)、ハンプデン(HAMPDEN)といったメ−カ−はかろうじてわかるかもしれない。

が、アメリカのポケットウォッチのメ−カ−は1850年から1930年までの間に限っても数十社に及ぶ。

中には数年で姿を消したメ−カ−もあるが、それらの殆どは技術力に経営がついていかなかったことが原因で倒産するか買収されたのである。

例えばハミルトンはKeystone Standerd Watch Co.とAurora Watch Co.を買収して成立した。

またハンプデンの前身はNew York Watch Co.であるが、ケ−スメ−カ−だったJohn C.Dueberに買収されている。(モデル名に“John C.Dueber”がある。)

あとはポケットウオッチの終焉と共に姿を消したメ−カ−が多い。

ロックフォ−ド(ROCKFORD)、サウスベンド(SOUTH BEND)などがそれにあたる。

ここではそうしたメ−カ−も含めて各社の代表的な機種を紹介してみよう。

COLOMBUS

コロンバスキング21,23,25石

レイルウェイキング17−21石

タイムキング21−25石

ELGIN

ベリタス21−23石

BWレイモンド21−23石

ファザ−タイム21−23石

HAMILTON

グレイド946 23石

940 942 21石

944 19石

HAMPDEN

スペシャルレイルウェイ17,21,23石

ニュ−レイルウェイ17,23

マッキンリ−21石

ジョンハンコック21,23石

ジョン.C デュ−バ−21石

E.HOWARD & Co.

オ−ルドハワ−ドはシリ−ズの全てがハイグレ−ド品だが、中でもム−ヴメントに“ADUJUST”もしくは鹿のマ−クが記されているものは特別調整品である。

ILLINOIS

ベンジャミンフランクリン17-26石

バン17,19,21,24石

バンスペシャル21-26石

ペンシルベニアスペシャル17-26石

A.リンカ−ン21石

ザ・レイルロ−ダ−

レイルロ−ドキング

PEORIA

PATENT REGULATOR装備の15,17石

ROCKFORD

グレ−ド900,905,910,912,918,945,200,205(以上18サイズ)

ワインバ−ゴ17-21石

モデル505,515,525,535,545,555(以上16サイズ)

SETH THOMAS

メイデンレ−ン21-28石

ヘンリ−モリノ−20石

モデル260

SOUTH BEND

ザ・スチュ−ドベイカ−329 21石、323 17石、327 21石(以上18サイズ)

ザ・スチュ−ドベイカ−229 21石、グレ−ド223,227,293,295,299(以上17-21石)

ポラリス21石(以上16サイズ )

UNITED STATES WATCH Co.MARION

ユナイテッドステイツ19石ゴ−ルドトレイン

U.S WATCH Co.,WALTHAM

ザ プレジデント17石 18サイズ

WALTHAM

1883年と1892年モデルのクレセントストリ−ト 17-23石、1892年モデルと1892年モデルのアプレトントレイシ−& Co.、1892年モデルのバンガ−ド17-23石など。

今回は18サイズ(44.9ミリ)を中心にあげた。

前回紹介しなかったメ−カ−は16サイズ (43.2ミリ)もあげている。

しかしここに紹介したメ−カ−もそのモデルも一部にすぎない。

あくまで筆者の独断で選んだものなのであしからず御了承を願いたい。

この他にもOTAY、TOREMONT、AURORAなど名品を生み出しその名を知られたメ−カ−はまだまだある。

今世紀に入るまでにアメリカの時計産業は倒産、合併、経営体制の交代によってメ−カ−が生まれては消えていったが、それらのメ−カ−の技術は当時の時計に残されている。

ハイグレ−ドウオッチと一口に言っても、数十年の間にム−ヴメントのシステムにも変遷がある。

それをみてゆくのも一つの楽しみであるし、手に入れるにしても廉価なものはまだまだ多い。

だが、いずれにせよその一つ一つがアメリカのウオッチメ−カ−が技術力で鎬を削った時代の産物であることは確かである。



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