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ヒゲゼンマイ錆取り

修理・レストア

NOTICE:This article written in Japanese.

(公開日: 2010/06/23)

ブルースティール(青焼き)のブレゲ式巻き上げヒゲの一部に現在進行形と思わしき錆が出ています。

過去に発生した錆が取り除かれた跡の黒錆はともかく、進行し続けている赤錆は放置出来ません。

時計のムーブメントにおいて、スティールパーツの錆は見栄えが悪いだけでなく様々な不具合の原因となりますが、精度に直接影響を及ぼす上に交換が容易でないヒゲゼンマイの錆はその中でも最も深刻なものです。


ヒゲゼンマイの錆取り後

顕微鏡でよく観察しながら注意深く錆を落としたところです。

その部分だけ酸化皮膜が取れて色が青くなくなりますが、これは致し方ありません。

ちなみにヒゲゼンマイに錆が発生した場合、多かれ少なかれ必ず時計は遅れるようになりますから、錆取りをした後にはテンプのウエイトを相当分軽くしてやるか、ミーンタイムスクリューを入れ込んでやらなければなりません。

ちなみにミーンタイムスクリューが装備されていないこの時計の場合、全体のバランスを取りながらチラネジの裏側を相当分削って軽くする必要がありました。

ヒゲゼンマイに関しては、「錆を取ったら終わり」という訳にはいかないのです。


ヒゲゼンマイの錆

これはまた別の巻き上げヒゲの錆です。

外側から6周目のところが1/4近く錆びて赤くなっています。


ヒゲゼンマイの錆取り後

先ほどと同様に注意深く錆を落とします。

この時計に関しては、遅れるようになった分だけミーンタイムスクリューを入れ込んでやることによって調整されました。

これら2点の場合、幸いながらヒゲゼンマイが錆びることによって受けた精度的なダメージは比較的小さなものでしたが、どちらももう少し錆が進行していれば間違いなく大きな「バラつき」に繋がるところです。

尚、ヒゲゼンマイに関しては、新規製作するための材料の入手がほぼ不可能な為既存の古いストックと交換するしか手がありませんが、そのストックですら完全に同一の寸法・質を持ったものの入手は困難です。

多くの場合、出来る限り近いものを選び出した上で、ヒゲゼンマイの長さ・形状、テンプの重さのバランスを調整することになりますが、これはかなり高度な修理になるためそれなりに費用が掛かります(特に巻き上げヒゲの場合)

裏蓋を開けてムーブメントを観賞する際は、そのまま話しをすることは勿論、鼻息や吐息等もかからないようくれぐれもご注意下さい。



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