時計部品製作
NOTICE:This article written in Japanese.
ユリスナルダンのデッキウォッチです。
いわゆる「ギョウムテンプ」を採用した21石の高精度機ですが、、、「スワンネック」のマイクロレギュレターがそっくり無くなってしまっていますね。
たまたま同型のムーブメントが入手可能な場合は「移植」できることもありますが、そうでない場合は新規に製作する以外ありません。
まずは資料の画像と突き合わし、焼きの入っていない「生」の炭素鋼の板に形をケガキます。
次に糸鋸で大まかな形を切り出し、所定の位置にネジ穴を開けたり、ヤスリで形を整えます。
本体の部材にある程度強度がある段階で、あらかじめ製作しておいた歩度調整用のネジの作動する雌ネジを、穴あけ・ネジ切り加工します。
ネジ穴の加工が完了したら、繋がっていた部分をはじめ、随時本体の肉を落としてゆきます。
大分それらしい形になってきましたね。
ほぼ完全な形状まで削り終え、必要な面取りも施しておきます。
見た目にはほぼ完成形ですが、この時点では部材は「生」のままですから柔らかく、反発力がありません。
この段階まで加工が済んだ後「焼き入れ」「焼き戻し」し、スプリングに必要な硬さと粘りの両立したものにする必要があります。
「焼き入れ」「焼き戻し」を終えたスワンネックです。
焼き戻しする際の熱で酸化皮膜が形成され「青焼き」になっていますね。
ここからいよいよ最終段階の「研磨・仕上げ」に入ります。
研磨・仕上げが完了したスワンネックが取り付けられた様子です。
資料の画像上のオリジナルと「同一の形状・材質、そして手法」で製作されています。
これで晴れて「高精度機」らしくなりましたね。
めでたしめでたし。
ご存知の通りマイクロレギュレターには様々なタイプのものがありますが、どれも元々微妙な歩度調整をするために取り付けられたもので、例えば「1日で1分も遅れる(或いは進む)」などという際に使用するべきものではありません。
不適切な作動幅で歩度調整を行おうとしたり、または分解掃除の際の脱着の際に乱暴に扱ったり、ということで、欠損していたり取り去られてしまっているものが多いのですね。